沖縄編

出発

東京に帰るのは今年の正月以来なので7ヵ月ぶりということになる。メッセージに残された謎の2曲に遭遇したのは、東京行きの飛行機に搭乗するために営業所を出ようとしたときだった。

昼前に吹田営業所を出て羽田空港には午後2時に到着。飛行機を降りて、モノレール、りんかい線、地下鉄を乗り継いで3時前には自宅がある豊洲に到着した。

久しぶりの自宅だ。家に着いて「ただいま」と言ってドアを開けると、6歳になる大輝が、待ち構えたように、

「おかえりなさい、パパ」と言って走りながら、ぶつかってきた。その後ろから琴音が来て、久しぶりに生の声を聴くことになった。

「お帰りなさい。本当に久しぶりね。元気だった?」

不安そうだ。僕の方は2人に声をかけてもらっただけで気持ちに少しだけ光がさした。やはり家族はありがたいな。

最近の僕の元気のなさや沖縄への異動のことは、琴音も心配している。これ以上の心配をかけたくない。メンタルクリニックで鬱状態と診断され薬を処方されていることは話さないことにしよう。家にいるのは2日程度なので、頑張って元気に振る舞おう。

着替えてからリビングに座る。台場の高層ビル群とコンクリートに囲まれて少し窮屈そうな海、以前と全く変わらない借景(しゃっけい)だ。この部屋を購入するときは仕事が楽しくて何もかも上手くいっていた。