沖縄編
変革
「本題に入るまでに皆さんの特技があれば聞かせてもらえますか? 山田さんはスケッチやイラストが得意だということですが、平良君はどうですか?」
「特技というほどではありませんが、高校のときにロックバンドでギターを弾いていました。他には卓球を少しです」
「それはいいですね。僕も音楽系サークルでロックバンドをやっていました。担当はベースでした。皆でバンドができるかもしれません。山田さんはキーボード弾けませんか?」
「『ネコふんじゃった』や『ゾウさん』くらいなら弾けますけど、キーボード弾けるとは言えません」
山田さんのできない宣言を無視しつつ続けた。
「これで3人、あとはドラムとボーカルだけだ」
「キーボードなんて無理です」
困った様子も魅力的だ。
山田さんは沖縄ではどちらかといえば珍しい一人っ子で、小学校の先生をしている両親に厳しいながら大切に育てられたらしい。小さい頃から一人で絵を描いているのが好きだったそうだ。
「別にバンドデビューするのではないので上手くなくても大丈夫です。皆で一緒に演奏すると楽しいから、機会があったらスタジオ借りて練習してみましょう」
「さて、前置きはこれくらいにして企画の説明をします。考えているのは、売り方、サービス、営業形態に関する3つの企画です。ただ、まだ全部決めたわけではありません。優れたアイデアは議論しているときに出ることが結構あります。だから皆で意見を出し合いましょう」
聞いている3人の反応は分からないが、僕の出方をうかがっている様子だ。
「まず、売り方についてです。今は3人が別々に車を売っていると思います。それを変更して2人1組で車を売ることにします。そうすることによってお客さんからの連絡を受けたときに片方が不在でも、どちらかが対応できるという利点があります。
インセンティブに関しては最初にお客さんを見つけた人が8割、もう1人が2割ということで、チームで販売してもらいます」と話をしたら、山田さんが手をあげた。