「はい、なんでしょう、山田さん」
「私は今まで事務仕事が中心で車のこともあまり知りませんし、車を売ったことはほとんどありません。誰かと組んでその人のインセンティブの2割をいただくのは申し訳ない気がします」
なんと控えめな意見だろう。チームワークを考えると悪くはない。
「でも目標は皆で協力することによって販売数を2倍、3倍に増やすことです。そうすればインセンティブが減ることはない。大事なのは協力して1+1を2以上にすることだと考えてください」
「なるほど、努力します。それで私は誰とペアになるのでしょうか?」
「今度来る亀井君とペアを組んでもらうつもりです。亀井君は沖縄が初めてなので、いろいろと教えてあげてください。
もう1人沖縄の若い人を雇って、その人は平良君と組んでもらうつもりですが、それまでは平良君は城間さんとペアです。ペアの相性は大事なので新しく雇用する人の面接には平良君に付き合ってもらいます」
「了解です」と平良君と城間さん。
「1ヵ月後に参加してくれる亀井君は明るくて爽やかな人です。それから僕が担当するお客さんの場合も山田さんに手伝ってもらいたいけど、いいかな?」
「えっ、所長もご自分で車売られるんですか?」
「もちろんです。4人しかいないので業績を伸ばすためには当然です」
実は車を売っても所長にはインセンティブはつかない。でもそんなこと言っている場合ではない。
「次に車を購入していただく方へのサービスです。今は購入してくださったお客様に何かしていますか?」と聞いたところ、城間さんが、
「本社から特に指示もありませんし、特別なことはしていません。購入時に車に飾るマスコットでもプレゼントしますか?」と提案してくれた。
「そうですね。それもいいと思います。とにかく車を当店で買ってくださったお客様がここで購入してよかったと思ってくださるようなサービス、記念になるようなことをしましょう。
私が考えていることは先ほど一つ増えて2つになりました。インスタントカメラで撮影をして記念にお客様に渡す店がありますが、当店では山田さんのイラストを活用したいと思います。車の前に購入者に立ってもらい、山田さんにイラスト描いてもらえればと思いますが、山田さん、どうかな」
「それなら私も役に立てそうだし、イラスト描くのは大好きなのでぜひさせてください。お客さまにずっと立っていてもらうのは申し訳ないので、車のところで一度ポーズを取ってもらって構図を大体決めたら、あとは購入手続き中に顔を見ながら描けると思います」積極的でいい感じだ。
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次回更新は12月27日(金)、8時の予定です。
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