沖縄編
変革
「そのイラストを店のロゴを入れた額に入れてプレゼントしよう」と僕が言うと、山田さんが今度は別の提案をしてくれた。
「記念品にはいくつか選択肢はある方がいいと思います。私がイラストを店のロゴ入りで描きますから、できればTシャツを作ってください。希望するお客さんにはそちらをお渡しすればよいと思います」
「それは素晴らしい提案です。街やビーチでそのTシャツを来た人が宣伝も兼ねてくれそうだ」
とにかく、アイデアには賛辞を送る。でもこれは実際に役に立ちそうな提案だ。皆で議論すれば一人で考えるよりずっと可能性が広がることを実感した。なんとかなりそうな気がしてきた。
「もう一つのサービスは先ほど平良君がギター弾けると聞いて思いついたのですが、バンド演奏です」
「バンド演奏をお客様にお聴かせするということですか?」
今度は平良君が質問してくれた。いろいろと意見や質問が出るのはいい傾向だ。低迷している浦添営業所だけれど、これならなんとかなるかもしれない。
「お聴かせするだけなら相当のレベルの演奏をしないといけません。それより、お客さんの歌いたい歌をいくつか伺って、僕らが演奏できそうな曲を選んでお客さんに歌ってもらいます。
そしてそれをスタジオで演奏したものを録音してCDかUSBメモリーに入れてプレゼントするのです。スタジオによっては無料で簡易録音できるところがあり、結構クオリティの高い録音ができます」と言うと、
平良君が、「それは斬新なアイデアですね。人によっては歌うより演奏したい人もいると思います。そういう場合には楽器を演奏してもらうのもいいと思います」と反応する。
そうそう、その調子。ますますいい雰囲気になってきたぞ。
「確かにそれもいいね。でもお客さんが楽器を演奏したい場合、問題は歌だ。歌が下手だと録音しても聴く気がしないと思う。誰か上手い歌い手はいますか?」
「僕はギターとボーカル担当でしたので、それなりに歌えます。山田さんも結構上手いです。でもなんといっても城間さんです。素人離れした歌です。音域も広く、音程やリズムも安定しています。上手いだけではなく、歌に心があります。曲によっては城間さんにお願いするのがいいと思います」
辞めていく城間さんに頼む? 戸惑った。
「でも辞める人にお願いするわけにもいかないかな」