「大丈夫だと思います。辞めるといっても沖縄にはいらっしゃるということですし、マイクを持ったら絶対離さないタイプですから。ねえ、城間さん」
そう言われた城間さんは、その場で立ち上がって、マイクを持つふりをしながら答えた。
「大丈夫です、所長。歌うのは大好きですし、それがCDになるなら喜んで伺います。もちろんボランティアです」
「ありがとうございます。ぜひ、お願いします」
「所長はアイデアマンですね。楽しい職場になりそうです。私は辞職を早まったかもしれません」
「この営業所で一緒に働いていただいた城間さんも家族同様です。ぜひ、バンド演奏、カラオケで側面から支援をお願いします。営業成績が2倍くらいになり、そのときにまだ一緒に仕事していただくお気持ちがあれば、本社に人員増加をかけ合います。業績を倍に伸ばせば多分大丈夫です」
歌が上手い城間さんが喜んで手伝ってくれると聞いてとても嬉しくて、つい大風呂敷を広げてしまった。ホントに大丈夫なのか?
「ありがとうございます。お手伝いさせていただきます」
「もう一人、若手を雇うときには、できればドラムができる人がいいですね。もちろん半分冗談だけれど」と言いながら続けた。
「スタジオ代などのコストは、最初から会社の経費というわけにはいかない。軌道に乗ったら会社と交渉してみるとして、それまでは僕が練習のためのスタジオ代は払います。
カラオケ代は割り勘でお願いします。音楽を皆で一緒に楽しく練習して、営業所の連帯感もでき、お客さんに喜んでもらえて、車もたくさん売れる、いいことずくめです」 2つ目の提案を締め括ろうとしたら、城間さんがもう一つ提案してくれた。
「でもオーソドックスに車のところで記念撮影が希望という人は結構いると思います。それも選択肢に入れておく方がいいのではないでしょうか?」
「山田さんが可愛い服、あるいはコスプレでもして車と一緒に写真に入ってくれれば喜ぶ人も多そうですね。3つ目の選択肢、採用です」
「分かりました。でもこの歳でコスプレはちょっと恥ずかしいです」
「大丈夫だよ。20歳でも通るから」
と平良君がコメントする。いいです。僕もそう思う。
「記念写真もイラストと同じように山田さんデザインの額に入れてプレゼントしましょう。それから、明日から制服じゃなく好みの服装での出社を歓迎します。ただし、仕事なので最低限のマナーは必要です。また、店員であることが分かるように名札だけはつけてください」
「会社の方で問題になりませんか? 制服を勝手に廃止して」と城間さん。
「廃止ではなく、あくまで自由化です。報告しなければ本社には分からないでしょう」
【前回の記事を読む】ここで購入して良かったと思える顧客体験とは?購入者にイラストや写真撮影のサービス。
ご愛読ありがとうございました。本連載は今回で最終回です。
【イチオシ記事】遂に夫の浮気相手から返答が… 悪いのは夫、その思いが確信へ変わる
【注目記事】静岡県一家三人殺害事件発生。その家はまるで息をするかのように、いや怒っているかのように、大きく立ちはだかり悠然としていた