大阪編

回復

「次はそこまでされるんやないかという恐怖心を持たせるだけでもええかもしれへん。角野さんもご存じと思いますけど、会社の金を私的な飲食に使っとると水島から聞きました。所長のことやから、どうせ女の子がいる店か、女の子連れてどっかにしけ込んでるんやろ。その現場写真も撮って一緒に掲示板に貼ったろ。それがええわ」

「写真は誰が撮るんだい。上手く撮れるかね」

「営業所内でセクハラしている写真を上手く撮るよりは難度が高いと思います。でも水島に聞いたら所長がよく使う店はすぐ分かるし、その店に行く人をネットで募集して、その人に所長の写真を送って、この人が来たら痴態を撮って欲しいと頼むんです」

「そのためにネットで人を雇ったりするのか?」

「協力してもらうだけで、雇っているわけではありません」

「お礼は払わないということ?」

「中には実費を請求する奴もおるけど、基本的には協力してゲームを楽しむ、みたいな」

「営業所内でのセクハラの写真は?」

「営業所内の写真は僕が狙ってみます」

2人の共同作戦が始まった。定期的ににしむら家で作戦会議と称して飲食した。そうこうしていると僕の精神的な状態はましになった。目標があると気持ちに張りがある。作戦会議と称して頻繁に2人で飲むのは予想外に楽しい時間だった。

相手が男性だと同じように付き合っても問題になることはないので気が楽だ。反田君は毎回ご馳走になってイイんですか?と律儀に聞いてくる。髪の毛にメッシュが入っている今時の若者だがしっかりしている。

最近の政治問題や国際社会における日本の立場などもよく理解していて、自分なりの解釈と意見も持っている。知識は全てネットで得たものだという。

本はあまり読まないようだが、音楽はポップスとロックが好きで、学生時代に僕がバンドを組んで演奏していたことには大変興味を持って話を聞いてくれた。反田君にはバンド経験はないが、楽譜は読めるし、音楽理論のこともよく知っている。人を見た目で判断するのはいけないということを身をもって知った。