大阪編
回復
「そうかもしれないけど、馘にすることも難しいよ」
「馘にできなくても、黙らせることはできるかもしれません」
「そんなことできるかな」
「まあ、やってみんことには分かりませんけどね。ところでさっき、若手と交流してとおっしゃいましたが、僕が一番の若手です。今度は何かあったら僕にも声をかけてくださいね。副所長は一番若くてこんなピンクのメッシュが入った髪の毛の奴に声をかける気にもならなかったんかもしれませんけど」
そう言われて一瞬たじろいだ。そうだったことを思い出した。照れ隠しで関西弁で答えた。
「そうかもしれへんけど、よう覚えてへんわ」
「関西弁、少し練習されましたか。結構いけてます。水島に教えてもらったんやないですか?」
「関西弁が話せると、セールスにプラスになるかなと思って、少し教えてもらったんだ」
「それやったら教えてもらう相手が違うでしょう。水島も東京出身ですよ」
「確かに。」
「ところで、2人で所長をギャフンと言わせる方法は?」
「副所長はなにかいいアイデアありますか?」
「そうだなあ、ところで、ギャフンと言わせてどうするつもりですか? 辞めさせることは難しいと思うけど」
「ギャフンと言わせたいだけで、その先のことは特に考えていません。まあ、今回は営業所が少しでもよくなればというのはあるけど、大体はゲームみたいな感覚です」
「ゲーム感覚ねぇ。世代のギャップはあるけど、なんとなく理解できるよ」
「副所長はそんなに年寄り臭くないです。どちらかと言えばこっち側です。だから水島も惹かれたんやと思います」
やっぱり、知っているんだな。気をつける方がよさそうだ。
「今、警戒されましたよね。表情で分かります。大体の事情は知っていますが、ギャフンと言わせたいのは副所長ではなく所長です」
「大体の事情って?」
「まぁいいじゃないですか。私は副所長の味方です。心配には及びません」
「心配はしていませんが……」と言いながらも困惑していた僕に反田君が続けた。
「水島は年上好みでいろんな人と付き合ってきたみたいですよ。誰か他の男に乗り換えたのかもしれません。副所長も女性には気をつけてくださいね」
どうも全部お見通しのようだと警戒を強めている僕に構わず反田君が続ける。
「ところでギャフンと言わせる方法ですが、副所長も考えてみてください」
「と言われてもなぁ、あまり思いつかないよ」
「すぐに思いついたら、面白くないやないですか。ああでもない、こうでもないの過程を楽しまんといけません」
「そんなもんかね」