大阪編

小康

2人は文学や芸術の好みが一致しているだけではなく、身体の相性もとてもいいことが分かった。

その日から僕の気持ちは水島夕未にのめり込んでいった。これ以上進むべきではないという考えはもちろんあったが、もう気持ちを止めることができなかった。自分が立ち直るためには必要なことだと自分を正当化して気持ちを誤魔化す。

なんとか立ち直れるよう、営業成績アップに向けての戦略をいくつか考えて所長に提案してみたが、「そんなことやっても無駄やろ、経費もかかるし」と毎回言われて相手にされなかった。そこを押して説得するだけの気力が欲しかった。

相変わらず若手とは話ができない状況が続いている。水島さんに教えてもらった関西弁で営業もしてみたが、そのぎこちなさは自分でも笑ってしまうくらいだ。彼女とは同じペースで付き合いが続き、それがかろうじて僕の支えになっていた。なんとか前に進もうと力なくもがいていた。