「そのコートは返品して、女の子にお金は返しました。関係のないみかどさんにまでご迷惑をおかけしてしまって……申し訳ありません」
お母さんがまた頭を下げるのに併せて、小谷くんも深々と頭を下げておりました。「……そうか。小谷くん、もう大丈夫だよ~。謝ったんだからもう気にしなくていいよ」と穏やかな父が笑いながら言いました。
「言いに来てくれてありがとう」と母も小谷くんの、涙でグシャグシャになった顔を見つめていました。
「おばさんは、小谷くんが正直に言ってくれて嬉しいよ。さっき、なんで最近小谷くんたちが来なくなったんだろうって、おじさんと話をしていたところなのよ」
「小谷くん、先生からの出入り禁止が解けたら、またみかどに買いに来てくれるよな……?」
父の言葉に、ずっと緊張していた小谷くんも大きく頷きました。
小谷くんとお母さんは、「本当にすみませんでした」と最後にもう一度、深く頭を下げて帰っていきました。その日と翌日は、さすがに大中の生徒は来ませんでしたが――三日目になると、生徒たちは「やっぱり、みかどに来なきゃ一日が終わらないや」とやって来て、その仲間の中に小谷くんも入っていました。
少し気まずそうでしたが、母の「小谷くん、いらっしゃい!」という明るい声に、いままでと同じように缶のミルキーを取り出し、「おばさん、これください」とお金を出しました。
以前と変わらず小谷くんを可愛がる両親のことを、心の大きな人たちだな……と思いました。
子どもの成長を見守るって簡単に言うけど……大変ですね。
【前回の記事を読む】「自分たちのこと、できが悪いなんて言っちゃダメだよ。」みかどのおばさんの言葉に、ヤンキー達の表情は柔らかくなった。
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