第3章 基礎段階

1 改善のスタートは、「問題点を見つける」

問題点には、いろんなレベルがあって「明らかに、危険だ」「誰が見ても、マズイ!」というものもある。また、見る人によって「問題と感じる」ものと、「これは問題ではない!」と断じられるものもある。

失敗学の師匠である畑村洋太郎さんの「教え」の中に、『人は、見たくないものは見えない』という重要な指摘がある。

現場を歩く時に如何に自分の記憶を思い出し、時系列的な変化を感じ、自分の持っている「当たり前」との違いに気づき、さらには、今見えていることが将来どのように変化し、化けるのかを想像する。こんな姿勢が大切となる。

もう少し、気軽に考えれば現場を歩いて、見ていて何かしらの「違和感」「気づき」「心の動き(スゴイ、ヒヤリ、怖い)」を感じたらストレートに行動に起こすべきと思う。そのままにしておくと、時間と共に急速に忘れてしまう。

また、違和感を抱いても何も行動を起こさないということは、周りの人達にとっては、「あの人は、何も言わなかった。問題と指摘されなかった、挙句の果ては、怒られなかったから認めてくれた、黙認してもらった」といいように解釈されてしまう。

「見て見ぬ振りをしない」という先人の教えの大切さを痛感するところ。ある人に「心に思っていることを伝えないのは、思っていないのと同じことだ」という話を聞いたことがあり、それ以来は自分にいつも言い聞かせている。

さて、現場を見る能力を磨く大切なポイントに「短時間で、または一瞬で視る、見抜く」ことが求められる。量産工場では、連続したライン作業などの作業観察のやり方として「3サイクル見て、問題を見抜く」という能力を要求される。

ただ私のモノづくり経験の後半は、ほとんどがサイクルタイムの長い工程、屋台方式、コックピット方式などであった。

そこでは、長いサイクルタイムの中の1、2分間程度の観察で、瞬間的に何らかの気づきをキャッチし、問題点を伝えることが必要だった。さらに、その要因を類推してその仮定した要因を裏付けるべく、現場を見るポイントを変更することも必要になってくる。