ホテルのようなものなのか。そこに行けば逢えるかも知れない。離れている場所をきいておかなければならないわ。

「すみません、ドックから離れているとはどういうことなのでしょうか?」

「造船所の正門から東側に歩いてすぐのところにあって、街中に飲みに行ったり買い物に行ったりするのに便利なところにあります」

「そうですか。忙しいなかありがとうございました。なん度もすみません、その巡視船はいつまでドックなのですか?」

「予定は九月十日までですよ」

「はい、どうも忙しいなかありがとうございました。失礼します」

『あきづ』の所在がわかった。恵利子さんに連絡しなければならない。

近くの電話でほかの造船所に電話していたのに気づいたのか電話をおき、笑みを浮かべていた。

「恵利子さんわかったわよ。因島にある○○造船所らしいわ。予定は九月十日まで○○造船所にいるらしいわよ」

「因島ですか。ここが大三島で多々羅橋を渡れば生口島、生口橋を渡れば因島ですね」

「近いじゃないの。ここからだと車でも二十分程度で行けるでしょうね」

「その造船所は生口橋の南側にあるらしいわ」

恵利子は休みのことを考えていた。

勤務先の配慮があり週末は休みが取れる。

「イベントの代休が今週の木金と取れるの。その日に逢いにいきたい……どうかしら?」

「大洲から因島まで行くの?」

「それはもちろんですよ」

イベントがあったので役所を休むことになった……それはしかたがないことである。いまの部署は幸い年度末まで多忙ということはない。それより、いまの自分の素直な気持ちを大事にしたかった。

あとあとになれば、逢いたい感性をいつまでも維持できているかわからない。鉄は熱いうちに打てというじゃないか。

「ドックでしょう。船の手入れとかで、その男性はそれなりのポストだと思うし、忙しいのと違うのかしら」

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