「いえ、おかしいとは全く思いません。僕は役割分担だと思っています。専業主婦として出産、育児、炊事、洗濯、掃除、ご近所付き合い等に責任を持って対応してくれるなら僕は喜んで外で働き、家庭生活を担ってくれる妻子の為に存分に働きます。コインに表面と裏面がある様に外で活躍する人間と家で活躍する人で家庭を築けたならと思っています」と幸村が答えた。

すると麗子が「私、心配性だから幼い子どもを預けて働けないと思うのです。子どもの事が気になって、そんな性分だから専業主婦で子どもが幼い時は傍に寄り添っていたいのです。そんな私って変ですか?」と麗子が本音を吐露した。

「ちっとも変ではありません。たぶん麗子さんは母性本能が豊かなんだと思えます。恐らく子犬や子猫を目の前にしたなら思わず微笑んでしまうタイプですよね」と言われ「たぶん……」と答えた。

そんな二人の前にデザートの杏仁豆腐が運ばれてきたところで幸村が意を決して「麗子さんのその専業主婦の夢、私に叶えさせてくれませんか? 決して贅沢な暮らしは、保証できませんが、私一人の働きでも人並みの生活は保証できます。どうかお願いします」と言って深々と頭を下げた。

麗子は異性とこんなにも忌憚なく話せたことは初めてだと思い、「私でよければ結婚を前提にならお付き合いさせて頂きます」と返すと、場所柄もわきまえず感極まった幸村が思わず「やったー!」と声を上げてしまった。

こうして須崎が月下氷人を務めたお見合いは絵に描いた様にうまくいった。後日、大喜びした里村から礼の電話が須崎に入れられたのは言うまでもない。

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次回更新は12月4日(水)、8時の予定です。

 

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