第二章 調査1、調査2、お手本は自衛隊

今回も如月陽子へ電話で報告を済ませた上で、桜田が如月に約束のフランス料理をご馳走するからと日程をすり合わせ、その約束を果たす日をセッティングした。

その約束を果たすべく、桜田は恵比寿駅近くの外資系ホテルの二二階にあるフレンチレストランに予約を入れた。

一方、三か月間の猶予で始まった宿題を二か月余りでほぼ終えた須崎は生まれて初めての月下氷人体験に挑んでいた。

幸村を見合いの場所のホテルで待機させ、須崎は里村の娘麗子と東京メトロ有楽町線護国寺駅で待ち合わせ、そこからタクシーで向かうことにしていた。

先に待っていた須崎に「お待たせ」と若い女性が声を掛けた。振り返ってその女性を確認した須崎が「おお、麗ちゃん久しぶり。何年振りかなー」と須崎が言うと「たぶん前回お会いしたのは、五、六年前くらいだったと思います」と艶やかな和装で着飾った麗子が答えた。

「そうか、五、六年前かー。じゃ、ここから先はタクシーで」と言って麗子を先にタクシーに乗せ運転手に行き先を告げた。そして、そわそわしながら二人を待つ幸村のもとへ向かった。須崎が麗子を伴って現れると幸村の目が点になっていた。

「おい、待たせたな。こちらが里村麗子さんだ」と須崎が紹介したのだが、その間幸村の目は麗子にくぎ付けだった。

親父さんとのツーショット写真でさえ綺麗な人だと思っていたのが、お見合いとあって気合を入れた入念なメイクと艶やかで上品な和装で着飾った姿にすっかり魅了されていた。まるで女優の様に幸村には見えていたのである。

そんな訳で「は、初めまして。幸村拓と申します。本日は宜しくお願い致します」と挨拶したのだが、事もあろうにすっかり声が上ずっていた。