第二章 調査1、調査2、お手本は自衛隊

須崎が生まれて初めて「月下氷人」に挑んだ時と相前後して、同じ様に三か月で取り組んだ調査を二か月そこそこでほぼ終えた桜田は、あの約束を果たす為、如月陽子を恵比寿にある高級レストランへ呼び出していた。

如月は約束の時間一五分前に桜田がリザーブしておいた席に着いて桜田を待っていた。そこへ呼び出した桜田本人は五分前にやって来た。

「ごめん陽子。待たせた?」と桜田に言われ「気にしないで。自衛隊では遅刻厳禁で一〇分前行動が当たり前なので、全く気にしていないから」と言った。

二人で席に着くと桜田が予めオーダーしておいた税別二万五.〇〇〇円コース料理が前菜から順に運ばれてきた。

「あら、気前よく随分と奮発してくれたわね」と如月が料理を前にしていった。

「まあね、今日は私の奢りなのでご遠慮なく召し上がれ」と答えた。

すると如月が「それで、どうなの? 貴方がやろうとしている事の参考になった訳?」とちょっと心配そうに訊ねてきた。

「ええ、お陰である程度イメージが固まったわ。それに大切なのは報酬もさることながら衣食住を保証する事だって分かったから……」と桜田が衣食住を保証する事の大切さを痛感したと明かした。

その時「この前、女性刑務官の採用から三年以内の離職率がおよそ四割と言ってたじゃない。女性自衛官の場合はどうかな? と思って調べてみたら二〇二〇年のデータで三・三%くらいだったから、その一〇倍以上は確かに突出しているわね」と如月が言った。

「そうでしょう、だから対策が必要なの。でもあの紹介してもらった木本真莉愛という名のキャバクラ嬢は、人間的に魅力的な女性だった。変な先入観を抱いていたから申し訳ないなと思っちゃった」と桜田が打ち明ける様に言うと

「貴方から見て魅力的ってどういうこと?」と如月が突っ込みを入れてきたので「質問に対する答えが振るっているのよ。あの規則でがんじがらめのお嬢様学校やサウナの例えなんかエッセイスト顔負けだと思えたもの」と桜田が感想を答えた。