その上、衣食住が全て国費で賄われる為、四年間で実に一.〇〇〇万円を貯蓄でき、借りた奨学金の六〇〇万円を完済できたと教えてくれました。参考にすべきは、衣食住の国費負担だと思えます」と発言した。
この二人の発言を受けて、団が「仕事の合間を縫って調べてみたんだが、確かに我が国の一次産業、農業・漁業・林業に占める就業人数は直近の資料で見ると数%で、逆に三次産業は七〇%を超えている。
その為、人手不足に陥った農業・漁業・林業では外国人技能実習と称して、名目は日本の優れた技能を伝授する様な振りして、要は日本人で労働力を賄えなくなった穴埋めをしている状況だった。そんな訳で桜田警部が言ったように、出所後に一次産業に就労させるのは妙案なのかも知れない」と発言した。
この発言を受けて桜田が「検事、今日は何故ここでディスカッションしているか理解しています? その大学教授みたいな物言いは変じゃありません? 検事という鎧を脱ぎ捨てて、今日は仲間同士として、語り合いましょうよ」と苦言を呈すると、須崎が
「桜田警部の意見に私も賛成です! 今日はみんな対等な立場で忌憚なく発言し合う方が成果が大きいと思えます」と団を見つめながら言うと、流石に団が
「……済まなかった。ビールを飲みながら偉そうに講釈して申し訳なかった。これ以後は日頃の肩書を捨て、無礼講で語り合いましょう」と珍しく素直に自らを反省して言った。
これ以後は団の口調も二人と同じになり、喧々諤々(けんけんがくがく)の白熱した議論が交わされた。
こうして第一回の極秘プロジェクトのミーティングが実行されたのである。
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