「ふーんそうだったの」とそっけない如月に向かって「今時の若者としては、見上げたものよ。コロナ禍で大変な思いをしている旅館の女将のお母さんに仕送りをしているって言ってたもの。三年後は自分が覚悟を決めてその旅館を受け継ぐとも言っていたわ。余りの健気さに感動したもの」と桜田が真莉愛のことを明かした。
「へーえ、彼女の実家旅館だったの。知らなかった。……確かにキャバクラ嬢をやってる割には芯がしっかりしているなと思って、連絡を取り合っていたんだけどね」と如月が答えた。
こうして、桜田と如月の交わした約束が果たされた。
それから一か月近くが経過して、あの三か月後の第一金曜日一八時、須崎のセッティングした新橋にある居酒屋での三人によるミーティングが行われた。
その個室に一番乗りしたのは団であった。その後すぐに須崎が現れ、開始時間の三分前に桜田が滑り込む様にしてやって来た。
「ああ、間に合った。先輩達をお待たせしたらどうしようと焦りました」としおらしく言うと「そんな玉には見えないけど?」と団が聞こえない様に呟いた。
須崎の音頭で三人は生ビールで乾杯し、三か月振りの三人の再会を祝した。適当にそれぞれ食べたい品を注文した後、本題へと入っていった。
その中で須崎は「自衛隊の任期制を手本とするなら、海上自衛隊の護衛艦の乗組員をイメージするのが一番適切だと思えるんだ。船に乗って大海原を航海するのと、離島に乗って大海原を漂う様なイメージは重なると思えるんだ。共に本土から切り離され、大変な不自由がある訳だから……」とこれまでの調査を踏まえて発言した。
すると透かさず桜田が「私が任期制自衛官を務めた経験者から聞き取り調査した中でも、海上自衛官は洋上勤務の際乗組員手当と航海手当が支給され、基本給は一・五倍近くだそうです。