光が強くなるにつれそこかしこのつぼみが膨らみ、やがて花開いた、花弁に緑色の筋を浮かべ、かすかに震えながら。それはあたかも、開こうとしたために花が揺れうごき、華奢 (きゃしゃ)な雌しべが白い花びらに当たり、かすかな鐘の音が鳴り響くようであった。

あらゆるものが柔らかくなり形を失った、まるで磁器の皿が流れだし、鋼(はがね)のナイフが溶けるように。その間も激しく打ち寄せる波が海岸を震わせ、丸太が倒れるようなドーンというくぐもった音を響かせた。 

「さあ」バーナードは言った「その時が来たんだ。その日が。辻馬車がドアの前にいる。僕の荷物箱が大きいせいで、ジョージのがに股が一層ひどくなっているな。ぞっとする儀式が終わった、入学祝い、玄関ホールでの別れの挨拶。

さあ、母親とはこみ上げてくる感情をぐっとこらえて挨拶し、父親とは握手しながら挨拶するんだ。今度は手を振り続けなければいけないな、振り続けなければ、僕の乗った辻馬車が角を曲がるまで。とうとうそんな儀式も終わった。嬉しいなあ、すべての儀式が終わったぞ。僕はひとり、初めて学校へ行くんだ。

「どの人間も今という瞬間のためだけに物事をしているようだ。そして同じことは二度としない。二度と。今という瞬間にひたすらせき立てられるのは恐ろしいな。みんな僕が学校へ行くこと、初めて学校へ行くことを知っている。

『あの坊ちゃんは初めて学校へいらっしゃるわ』と女中が階段を掃除しながら言っているぞ。泣いちゃいけない。みんなを何気なさそうに見なくちゃいけないんだ。目の前には荘厳な駅の入り口が広々と開き、『満月のような時計が僕を見つめているぞ。』

言葉を次々に連ねて、何か確かなものを、僕自身と女中の視線との間に、時計の凝視との間に、僕を見つめる顔、無関心な顔との間に築かなければいけないんだ。

さもなければ泣いてしまうだろうな。ルイスとネヴィルがいるぞ、二人ともロングコートを着て旅行かばんを提げ、改札所の傍らに立っている。二人とも落ち着いているな。でも普段と違って見えるんだ」

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