「まだ若いのに偉い! ところで田舎の旅館ってどこにあるのですか?」と桜田が訊ねると

「能登半島です。近所の有名な旅館は『日本の一度は泊まってみたい旅館ランキング』のベストスリーの常連です」と答えてくれた。

「ああ、あの能登半島で有名な旅館の傍なのですか」と桜田が呟いた。

「初代の頃はうちの旅館の方が有名だったと聞いた事があります……だから母親の思い入れも強くて……」と真莉愛が呟く様に言った。

こんな風にして桜田の聞き取り調査は行われていった。その中で桜田は木本真莉愛の職業をキャバクラ嬢と聞き、ある種の先入観を持って臨んでしまった自身の軽率さを恥じていた。

実際に会って話を聞いたキャバクラ嬢、木本真莉愛は自身の人生にしっかりと向き合い、過去の刹那的に人生を費やした自分を猛省して、自らを罰する思いで一念発起の上で任期制自衛官に応募した事や、三年と期限を切って接客技術を磨く為の再度のキャバクラ嬢志願等、今時の若者なのに尊敬できる人物だと思えた。

何よりも今時、母親の助けにと仕送りする健気さに桜田は心打たれた。それと、あのエッセイストの様なサウナ風呂への例えが秀逸な印象として心に響いたのだった。

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次回更新は12月3日(火)、8時の予定です。

 

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