第二章 調査1、調査2、お手本は自衛隊

「それで私なりに調べてみようと陽子に相談して、貴方を紹介してもらったという訳」と、とうとうと事の経緯を桜田が詳細に語ってみせた。長い長い桜田の説明を時折、頷きながら困り顔で聞いていた百合子が

「起訴できないのは困りますね、罪を問えない訳でしょう? 私も最近新聞を読んでちょっと変だなと感じていたんですが、オレオレ詐欺の出し子が捕まっても不起訴処分になったという記事を読んで、そんな生ぬるい事でいいのかな、と思っていました」と最近の世相を憂いた。

「そうでしょう。下着ドロボーなんかは、四回目の逮捕だとか五回目の逮捕なんてざらよ。起訴していないから調子に乗って懲りずに何回も繰り返しているのに検察は起訴しようとしない傾向があるの」と今度は桜田が現状を嘆いた。

「逮捕歴四回、五回って常習犯というレベルですよね」と百合子が驚いた様に言った。

「私達が主に扱うDV犯にも逮捕歴数回なんて当たり前、この間なんて九回って兵(つわもの)もいたくらいなの」と明かした。

「九回?……」百合子が呆気に取られた。

「昭和四〇年代、検察の起訴率は八〇%を超えていたらしいけど、今の起訴率は二〇%台だと聞いた事があるわ」と桜田は起訴率が大幅に落ちている事を告げた。

「確かに何とかしないといけない状況ですね。世界一、治安がいいと言われる日本の将来が不安になりますね」と百合子が心配そうに言った。

「そう、司法崩壊は治安の崩壊に繋がるわ。何とかしなければいけないの」と桜田が自身に言い聞かせる様に言った。

「あのー、私に他に何か聞きたい事ってありますか?」と問われ

「貴方は、二年で終われる任期を更新したと言ったけど貴方の様に任期を延ばす人って全体の何割くらいなの?」と桜田が問うと

「私の頃は約四割が任期延長に応じていました。でも最近は二割弱と現役で頑張っている友だちから聞いた覚えがあります」と話してくれた。

「そう、二割かー」と桜田がため息交じりに言った。