僕の大学デビュー天下取り物語

金髪坊主はその声が届いたか届いてないのか、分からないがそれでも攻撃をやめない。なんなら、先ほどの首にタトゥーが入った男も攻撃に加わり、僕を蹴っている。

意識が遠のく最中、目の端で正座している新一郎たちを見た。完全にビビっているのか、新一郎たちは心配そうにこちらを見ているだけで、立ち上がる素振りもない。

新一郎の持ってきた縁石は、元からこの駐車場にあったかのように置かれていた。

1台の車を停めるスペースに二台の縁石。明日からここに車を停める人は、驚くだろうな。

新一郎と目が合う。新一郎は、僕からパッと目を背ける。

「新一郎、ウソだろ……」

金髪暴走の拳は情け容赦なく僕に降り注ぎ、金髪坊主の仲間たちも様々な角度から僕を蹴り続ける。

冬の寒空の下、永遠に終わらないんじゃないかと思うくらいヤンキー達の攻撃を受け続けながら、僕はぼんやりと村崎とやっていた「ヤンキー遊戯王」を思い出していた。

暴走する金色のゴリラ、金髪坊主、攻撃力2500、守備力2000。僕は、大学デビューの口だけ男木本しゅん、攻撃力500守備力300。

最初から勝負にならない。

「なんしよんや、お前ら!」

突如、駐車場に怒号が響いた。その声に金髪坊主の攻撃がやっと止まった。声の方を見ると、また一人、茶髪の鳥の巣みたいな頭をしたヤンキーが駐車場の階段を登って、近づいてきていた。

そしてその後ろからもう一人。隆志の姿。

「た……隆志?」

初登場、茶髪鳥の巣頭のヤンキーは倒れてる僕の元へ近づいてきた。

「なに、勝手に喧嘩初めてんだ!」

茶髪鳥の巣頭のヤンキーが、金髪坊主を突き飛ばす。そして……

ボグッ!

僕はそのヤンキーに思いっきり顔を蹴り飛ばされ、生まれて初めて意識を失った。

目を開けると、そこは自分の家だった。

まるで何十年もの長い眠りから目を覚ました後のような感覚だった。

「おお、大丈夫か?」

近くには新一郎と他の仲間達がいる。

まったく状況が理解できない。

「お前、気失ってたんよ。やからオレ達で運んだんだ」

そうだ。喧嘩してたんだ。

「クローズZERO」やってたんだ。

いや、喧嘩でもない。一方的にリンチされただけだけど……!

起き上がろうとしたら激痛が走った。

それでもゆっくり起き上がって鏡を見る。

そこには顔が3倍くらいに腫れ上がった血まみれの化け物がいた。

他の仲間達の顔を見ると、みんな傷一つ負ってなかった。