お口を覗くと身体の栄養状態が見えてきます
お口も身体の一部だよ
毎日、人のお口の中を診ていると、不思議に思うことがあります。同じように歯を抜いたのに、傷がすぐ良くなる人となかなか良くならない人、被せ物がすぐに取れてしまう人。一生懸命クリニックに通い全てのむし歯を治したのに、2巡目に入っていく人。真面目に歯磨きを行っているのに歯茎からの出血が多い人。
私が治療してるのだから、技術的に同じことをしている。なぜ、治療後に違いが出てくるのか?
歯科医師になった頃、治療といえばむし歯を見逃さない→削る→詰める→完了。
抜歯後に治りにくいのは、たまたまだよね、そんなこともあるよね、と考えていました。他の先生に伺っても、そのうち治るよと。
むし歯を繰り返す、被せ物や詰め物が外れる、抜歯の傷が治りにくい、出血が多い、原因ははどこにある?
歯茎からの出血も抜歯の傷でも、炎症(赤くなったり腫れたりして痛みを伴う症状)時、炭水化物やタンパク質が不足すると、白血球機能が低下して、炎症が長引く。また炎症が治り骨や粘膜が作られるとき、タンパク質や亜鉛、銅、ビタミンAやビタミンCが不足すると、線維芽細胞の機能低下やコラーゲンの合成機能の低下で傷の治りが悪いということにつながる。
まとめると炭水化物やタンパク質、亜鉛、銅、ビタミンAやビタミンCが不足すると、炎症が収まらず、痛い時間が長くなり、傷の治りが悪くなってしまうということ。これは口腔内でも、身体の他のところでも同じです。口腔内と同じように身体中に粘膜も骨もあります。こんなふうに栄養の話を歯科ですると、「は?」となる人も多いです。
しかし、歯もお口も身体の一部ですよね。あなたは食べ物をどこで食べていますか? お口以外のところから食べるという人はいますか?
お口から食べて、食道を通り、胃へと流れていきます。ここからもお口は身体の一部なんだということがわかります。身体は食べたものを消化して代謝して吸収して、初めて身体の中で栄養となります。歯も歯茎(歯肉)も、歯を支える骨も唾液も、食べたものからできています。
歯茎はコラーゲンが約70%を占めています。身体の骨の枠組みもコラーゲンです。立派なコラーゲンを作るためには、タンパク質や鉄、ビタミンCが必要です。
骨といえばカルシウム、と聞くことが多いですが、まずはコラーゲンで枠組み、枠組みができた骨を強くするために、ビタミンDやビタミンK、カルシウムやマグネシウムが必要です。建物を建てるとき、いきなりセメントを流したりしませんよね。鉄筋なり木造なりの枠組みを作ってからセメントを流しますね。身体も同じ、まず枠組みです。