自衛隊の任期制と期間工を交互にやっているという兵(つわもの)がいると聞いた事もある。でも三年間で三〇〇万円の退職慰労金は確かに破格だな。任期制での募集の脅威になるかも?……」とちょっと不安そうに里村が感想を話した。そして

「でも、何でうちの海自なんだ? 空も、陸にも任期制はあるのに?」と里村に質されて

「これは、こっちの国防機密だと思って聞いてほしいんだが、刑務所を離島に配した場合、内地勤務者とのバランスを取る必要があるだろう? 離島に僻地勤務手当では対応しきれないと思えるんだ。

そんな訳で抜本的に処遇を考えるなら、海上自衛隊員が大海原を船に乗って勤務しているのと同じく大海原に浮かぶ離島で勤務する訳だから、イメージ的にも似ているだろう。それで海上自衛隊員の処遇をお手本にさせてもらおうと俺は考えたんだ。それだけの事なんだが……」と須崎が答えると

「なるほど、船の上か、島の上か、だけの差だものな。確かにお前、いい所に目を付けたじゃないか。そうか、日本にもあの映画になった脱獄不可能の『アルカトラズ刑務所』みたいなのができるかもしれないのか」と里村が感心してくれた。

「くれぐれも内密にな」と須崎は念を押すのを忘れなかった。

「分かっている、分かっている。安心しろ」と里村が返してきた。

この後、里村が参考になればと海上自衛隊員の任期制自衛官の処遇内容を示したファイルを資料として提供してくれた。須崎がカバンに資料を収めたのを確認するとあの当直広報官にタクシーを呼ぶよう指示した。

この後二人は前橋駅近くの里村行き付けの居酒屋へと繰り出し生ビールで乾杯した後、里村が「さあ、これからは仕事の話は抜きで、大学時代からの親友なのだから無礼講でやろう」と言い出した。

「ああ、そうしよう」と須崎が応じた。すると

「お前、来年の定年以降どうする心算だ?」と質してきた。

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次回更新は11月23日(土)、8時の予定です。

 

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