第二章 調査1、調査2、お手本は自衛隊
須崎はF刑務所の自身の執務室に戻ると直ちに「T自動車メーカーの模範囚受け入れの件」と題する報告書の取りまとめを始めた。そして、人事担当の豊田から提案された社会貢献活動の一環としての一名枠の特別採用の件についての承認を求めるのであった。
数日後、法務省矯正局長名で豊田が提案した社会貢献活動枠一名採用について、条件付きで許可すると通知があった。
そして、その条件とは、他二社以上と同条件で採用者を確保する事とあった。つまり、業界として『三名以上採用させろ!』という事である。結局、役所としては一社だけだと公平性を欠くとマスコミや世間から批判されかねないと懸念したのである。
後日、須崎が電話でT自動車の人事担当豊田に矯正局長の虫のいい条件を単刀直入に伝えたところ、
「分かりました、この件暫く私に預けて頂けますか? 私としてはクリアーできると思いますので……」と言われ
「そうですか? 無理難題だとは承知しておりますので、断って頂いても何も問題はありませんが……」と言葉を濁す様に言うと
「大丈夫です。それなりに自信がありますから、御心配は無用です」と言って電話を切った。
その僅か二日後、豊田から電話が入った。
「もしもし、須崎ですが?」と電話に出ると
「先日の件ですがグループ会社の軽自動車メーカーと同じくグループ会社のトラックメーカーにそれぞれ一名枠を設ける事ができましたので業界として三名受け入れる条件で我々グループ会社の社会貢献活動の一環という事でお引き受けさせて頂きます。