「休日なのに済まないな、早速なんだが任期制自衛官の人達の処遇について、教えてほしいんだ。刑務官不足の対策の一環として導入できないか、内々に調べてみたいんだ。その上で具申してみたいと思ってな。お世話になった御奉公の心算(つもり)だ」と須崎が言うと
「そうだよな、俺もお前も来年で定年だものな。その気持ち分かる」と里村が言った。そこで須崎は
「単刀直入に聞くけど、任期制自衛官の魅力ってズバリ何だと思っているんだ?」と切り込んだ。
「……たぶん任期終了時の退職金と福利厚生、衣食住が無償の事かな?」と里村が答えた。
「任期終了時の退職金って、具体的にいくらもらえるんだ?」と須崎が質すと
「二年の任期終了時に約六〇万円、三年任期を務め上げると約一〇〇万円、二任期の四年間だと一五〇万円程だから、退職金としては破格なんじゃないか? そもそも民間会社じゃ三年以内の退職だと退職金なしという所がざらだろう?
それと海上自衛官は陸上勤務者と洋上勤務者では全く給与が違うんだ。洋上勤務者には航海手当と乗組員手当が支給される為、基本給が三割、四割増額されて給与が支払われるから、三〇歳で四〇万円を超える給与が支払われるんだ。
昨今の低所得とか貧困とかとは無縁ともいえる。福利厚生もしっかりしていて、民間会社が廃止した配偶者手当、子ども手当、扶養手当等も支給されている。
その為独身隊員が結婚して、子どもが生まれるとそれだけで給与が一〇万円以上アップするから共働きより専業主婦が多いんだ」と詳細に処遇を語ってくれた。
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次回更新は11月22日(金)、8時の予定です。