第一章 急激な進行 首から下が動かない

ICUへ

【26日】

入院した翌日から検査や治療が始まった。私の場合、進行が早いのが幸いしてか、ギランバレー症候群と早々に診断された。

ひと月かけて筋肉が衰えていくのだが、またゆっくりと戻っていく。原因は解明されていないが、自分の免疫が本来守るべき自分の細胞を傷つける。ざっくりと説明すればそうなのだが、実際は軽症も重症もあり入り口も出口もバラバラだ。

脳から手足に運動の命令を伝える神経が役に立たなくなる。足から始まり、私は喉の筋肉も動かなくなり、しだいに呼吸困難になっていった。喉の筋肉が低下したせいで痰を出せなくなる。

この痰の多さには、後々まで苦しめられた。原因としては、生の鶏肉を食べたとか予防注射で発症する人もいるらしい。どちらも私には覚えがなかった。発症の仕方や治り方もまちまちだから、ややこしい病気だ。珍しい病気だから、すぐに診断が決まらないのが普通らしい。たらいまわしにされて、回復が遅れることもあるから私は幸運なのだろう。

「急変する可能性があるから常に連絡を取れるようにしておいてください。血漿交換をすると血圧が下がることも、出血、感染、アレルギー反応などの合併症が起こることもあります」

夫は担当医の説明を聞いた後、血漿交換の治療承諾書に、私の代わりに署名をした。20%の確率で感染はあるかもしれないという。しかし、この時は否という選択肢は考えられない。医師を信頼して、すべてをゆだねるのが最善の道だと思う。

同時に免疫グロブリンの大量投与が始まった。これは続けて5日間。グロブリンは点滴で入れるので部屋を移動する必要はないが、血漿交換は特別な装置がある部屋までストレッチャーで移動し、それに乗ったまま治療を受けた。

10時0分    電気生理検査(電気刺激により末梢神経の障害を検査)

12時44分  心臓超音波検査(エコー)

14時0分    四肢脱力あり、挙上できず

       入眠するとSpO₂(動脈酸素飽和度)低下あり 80%後半から90%前半

18時30分  IAPP(血漿交換)より病棟にベッドにて帰還

19時45分  呼吸苦あり 帰還時ほとんど四肢動かせず

       会話はスムーズ とろみ状でリクシアナ(血栓防止のため)を飲む

20時0分      溶連菌検査 痰が絡み、出し切れない

午後から血漿交換が始まった。私の血液を取り出して勘違い免疫を取り除き、健全な血液を体内に戻す、簡単に説明するとこういうことだ。時間にして約3時間強、透析と似ている。26・27・29・31日が1クールだ。血漿交換の効果が出るのは2週間後ということだった。

たった1日半で、あっという間に動かせるのは首のみになった。ギランバレー症候群の患者が皆これほど急速に筋力が低下するわけではないが、私は急速に重症化した。