僕の大学デビュー天下取り物語

ただこの時点では冗談半分の感じもあり、みんながどこまで本気なのか探り合ってる感じもあった。しかしその後にアイスを買いに寄ったコンビニ、そこの漫画棚に置いてあった「ワンピース」を見たとき、僕の中の決意が固まった。

中学のときの初恋。あのとき、返ってこなかった「ワンピース」。そのときからずっとくすぶっていたヤンキーへの憧れと嫉妬。それらと「クローズZERO」のような生き方を一度でいいからしてみたいという気持ちが、全て繋がった。

アイスを食べながらコンビニの前でタムロしている新一郎達に、僕は言った。

「なあ、さっきのケンカの話……マジで、やらん?」

こうして僕らは晴れて、金髪坊主率いる工学部と喧嘩することにした。

次の日、さっそくその工学部グループの一人をミクシィで見つけたので、呼び出した。

呼び出した理由は、詳しくは覚えてない。確か新一郎が仲良くしていた女の子が、工学部のグループの一人とヤッたか途中までヤッたかよく覚えてないけど、そういう理由だ。

難癖だったので覚えてない。

「とにかく、お前ら工学部のヤツらは調子乗ってるからまとめてぶっ飛ばす」という旨と、「三日後の夜十一時、金髪坊主を連れて、大学の第二駐車場に来い」と伝えた。

金髪坊主からもそいつヅテですぐに「お前ら覚悟しとけよ」という連絡が返ってきて、瞬く間に問題は大きくなった。

農学部対工学部。ついに天下を賭けた桶狭間の一戦の幕開けだ。喧嘩は僕と新一郎、あと何人かの農学部のヤツらで計画したことで、残りのF4、村崎と隆志は無関係だった。

だけど、僕はなんとか隆志も巻き込みたかった。村崎は明るいチビなので戦力にならないが、隆志は元野球部であのガタイ、誰の目にも喧嘩が強いことは明らかだった。

ガタイの良い金髪坊主と張り合えるのは隆志しかいないと思った。でも喧嘩の話を隆志にすると、隆志は全く乗ってこなかった。

「なんだよ、それ。くだらねー。もう大学生だぞ、オレら。勝手にやれよ。」

隆志の言うことはごもっともで、今考えれば国立大の大学生が何を急に勘違いしてヤンキーごっこしてんだろうって感じだが、そのときの僕は隆志のことをビビってるだけだと思った。

「隆志って、あんな感じだけど本当は喧嘩とかしたことないチキン野郎なんじゃね?」

「かもなー」

新一郎と陰でそんなことを言って笑い合った。喧嘩なんてしたことないのは、こっちの方だって言うのに。

そして、ケンカ当日。僕らはいつも通り大学の講義を受けて、牛もちゃんと牛舎に戻した後、僕の家に集まっていた。

集まったのはあのとき「クローズZERO」を見て感銘を受けた五人。僕はタンクトップにジャージ、ネックレス。新一郎は白の上下スウェットに金のネックレス。各々が自分が思うヤンキーっぽい格好に着替えて、バットや木刀などの武器を持ってきていた。