第一章 元気になるってどういうこと?
精神疾患について
③幻覚や幻聴のなぞ
精神状態が不安定な中で、いろいろなものに連想されて認識されることは、大いに考えられます。だから、幻覚や幻聴を見る人は、本当に見えたり聞こえていて悩んでいたり、こわい思いをしているのです。
近年の医学では、幻覚や幻聴のメカニズムも解明されつつあるようですが、高度な内容になるためここでは省略します。
④双極性障害(躁うつ病)とは
双極性障害は、躁状態とうつ状態を繰り返す病気です。躁状態とうつ状態は両極端な状態です。その極端な状態を行ったり来たりするのが双極性障害なのです。
気分の波は誰にでもあります。幸せな感じがする時もあれば、悲しい気分の時もあるのは普通です。嫌なことがあった時に落ち込んだり、楽しいことがあった時にウキウキしたりするのは、ごく自然なことで病気ではありません。
しかし、周りの人達が「何かいつものあの人とは違う」と感じたり、「ちょっとおかしいのでは?」と思えるほどその気分が行き過ぎていて、そのために家族や周りの人が困ったり、大胆な行動などをして社会的信用を失うほどであれば、双極性障害かもしれません。
双極性障害では、ハイテンションで活動的な躁状態と、憂うつで無気力なうつ状態を繰り返します。躁状態になると、眠らなくても活発に活動する、次々にアイデアが浮かぶ、自分が偉大な人間だと感じられる、大きな買い物やギャンブルなどをする等といったことがみられます。
躁状態ではとても気分が良いので、本人が病気を自覚することはなかなかできません。そのため、うつ状態の時には病院に行くのですが、躁状態の時は治療を受けないことがよくあります。
しかし、うつ病だけの治療では双極性障害を悪化させてしまうことがあります。双極性障害の人に抗うつ剤で治療してしまうと、うつが治まった時に逆に躁状態が高まってしまういわゆる「躁転(そうてん)」が多々あるからです。
しかし、病院にはうつ時にしか行かないので、双極性障害と診断されずうつ病と診断され、自分の本当の病状にあった治療を受けるのに数年かかることも多い病気です。双極性障害も百人に一人程度の患者さんがいるといわれています。