⑤うつ病について
うつ病も双極性障害と同じ気分障害の1つです。一日中気分が落ち込んでいる、何をしても楽しめないといった精神症状とともに、眠れない、食欲がない、疲れやすいといった身体症状が現れ、日常生活に大きな支障が生じます。
気分障害には、うつ病と双極性障害(躁うつ病)などがありますが、うつ病ではうつ状態だけがみられます。うつ病と双極性障害とでは治療法が大きく異なりますので専門家による適切な判断が必要です。
日本では、百人に約六人が生涯のうちにうつ病を経験しているという調査結果があります。また女性の方が男性よりも1・6倍くらい多いことが知られています。
女性の場合は、妊娠や出産、更年期といったライフステージに関連して、うつ状態が関わってくると考えられています。
精神の病気について思うこと
これまで紹介してきた病気の他にも、最初に示したように精神にはさまざまな症状の障害や病気があります。このような精神の病気や発達障害は目に見えず、理解されにくい面があります。
しかし、1つだけ理解してほしいのは、「なりたくてなった人はいない」ということです。遺伝が関係している場合もあります。周りの環境や人間関係から発症する場合も多いです。
同じ環境でも病気にならない人もいると思われるかもしれませんが、それはその人の体質です。他の一般的な病気と変わりません。むしろ、周りの環境に合わせようと頑張ったからこそ、その頑張りに限界が来た時に精神の病気になってしまうのです。
では、精神の病気とはどう関わっていけばよいのでしょうか。私は病気も自分の個性の一部として、受け入れていくことが大切だと考えます。
前にも書いたように、精神の病気は完治するものが少なく、病気をうまくコントロールして、付き合っていくことが大切です。
私自身も、なんでこんなにたくさんの薬を飲んで、こんなに行動に制限をかけたり気を配っているのに、うまくいかないのだろうと考える時もあります。でもこれが自分なのです。
だったら自分のできる範囲で、できることに挑戦して、頑張っている自分を褒(ほ)めてあげたいのです。そうやって自分や病気を悪く捉(とら)えず、認めること、そして向き合うことで、病気とうまく付き合っていけるのだと思います。
私の場合は1度目の入院と2度目の入院の間が長かったため、薬は飲んでいましたが、数年間は睡眠時間や仕事量やお酒などについても深く考えず、普通に生活していました。
しかし2度目の入院の後は、頻繁(ひんぱん)に入院が続き、生活や考え方を変えざるを得なくなりました。しかし、それによって病気についての理解や、自分の特性や長所、そして限界も知ることができました。これは私にとってはとても大きな分岐点だったと思います。
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