俳句・短歌 短歌 故郷 2020.08.14 歌集「星あかり」より三首 歌集 星あかり 【第4回】 上條 草雨 50代のある日気がついた。目に映るものはどれも故郷を重ねて見ていたことに。 そう思うと途端に心が軽くなり、何ものにも縛られない自由な歌が生まれてきた。 たとえ暮らす土地が東京から中国・無錫へと移り変わり、刻々と過ぎゆく時間に日々追い立てられたとしても、温かい友人と美しい自然への憧憬の気持ちを自由に歌うことは少しも変わらない。 6年間毎日感謝の念を捧げながら、詠み続けた心のスケッチ集を連載でお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 目に見えぬ心に見える人絆 人の恋しい秋に成る哉 見えぬ目の心に映る友情の 人の恋しい秋に成る哉 紅葉のもみじとも呼ぶ楓の木 人の恋しい秋に成る哉
小説 『恋愛配達』 【第15回】 氷満 圭一郎 配達票にサインすると、彼女は思案するように僕の顔を見つめ「じゃあ寄ってく?」と… 「本業は酒屋で、宅配便はバイトです。ところでさ」ぼくはたまらず差し挟まずにはいられない。「さっきからなんなの、どっち、どっちって?」「だってあなた、ドッチ君だもん」「何、ドッチ君て?」すると瞳子さんは、ぼくの胸に付いている名札を指差した。これは配達者が何者であるのか知らせるために、運送会社から貸与されているものだ。ぼくの名前は以前病室で宴会を開いた時に教えていたはずだが、漢字までは教えていない。…
小説 『新西行物語』 【第5回】 福田 玲子 月の美しいある夜、僧正坊に逢いたくてたまらない想い人の話しをし始めた西行は… 僧正坊が教えてくれた泉は、その後の庵(いおり)の暮らしに大層役に立った。西行が鞍馬山(くらまやま)に籠(こも)っていた間にほんの数回、僧正坊は西行の庵(いおり)を訪れた。いつも人を馬鹿にしたような高笑いとともに、突然やってくる。それも西行が経文 (きょうもん)を開いて居眠りしていたり、慣れない手つきで竃(かまど)に火を起こして煙にむせていたり、妙な時ばかりに来る。だから西行はいつも迷惑げな頂面仏…