俳句・短歌 短歌 故郷 2020.08.11 歌集「星あかり」より三首 歌集 星あかり 【第3回】 上條 草雨 50代のある日気がついた。目に映るものはどれも故郷を重ねて見ていたことに。 そう思うと途端に心が軽くなり、何ものにも縛られない自由な歌が生まれてきた。 たとえ暮らす土地が東京から中国・無錫へと移り変わり、刻々と過ぎゆく時間に日々追い立てられたとしても、温かい友人と美しい自然への憧憬の気持ちを自由に歌うことは少しも変わらない。 6年間毎日感謝の念を捧げながら、詠み続けた心のスケッチ集を連載でお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 うつむきに歩く我が身に枯れ葉落ち 人の恋しい秋に成る哉 目の前に揺れて止まるや赤蜻蛉 人の恋しい秋に成る哉 我が友のいつでも傍で暮らしたい 人の恋しい秋に成る哉
小説 『春のピエタ』 【第7回】 村田 歩 刑務所で、お袋と13年ぶりに対面…こんなに小さな女だったか―。あの頃、生活が苦しく、いつも歯を食いしばっていたお袋は… 俺たちは婆さんより早く呼ばれた。刑務官に案内されているとき、初めて親父が落ち着かない様子を見せた。首から下は先を行く刑務官に素直に従っているのに、首から上はまるで道を見失ったかのようにあたりをきょろきょろ見回している。勝手が違う、といった顔だ。俺は急に不安になった。悪い想像が浮かぶ。たとえばお袋は急病で、敷地内の医務室のベッドで身動きできなくなっているのではないか。だからいつもの面会室で会うこと…
小説 『人生の切り売り』 【第10回】 亀山 真一 初めての恋人をネタにした話を書いたら映画化!さらに続編を企画してもらえないかと嬉しいオファー 「初恋も未経験の十六歳が何をそんなに焦ってたのか。確かに女子高生が女子高生でいられるのは三年間だけだけど、そう思えるのもだいたい大人になってからでしょう」ベッドの上でうんうん唸る私を、冷たい視線が見下ろしていた。「困ってるなら、僕が書かせてあげようか?」「そのやり取りも飽きたなあ」「飽きた……?」悪魔が目を丸くする。この男にこんな顔をさせるなんて、私もなかなかやるではないか。「大丈夫。まだ上手く…