大学生気分…乙女だった ―結婚前と結婚後―
金色夜叉
朝「今日、仕事休んで」「休めない」。父と母の大きな声。そのときの姿は今も映画のスローモーションのように頭から離れない。
父の足にしがみつく母。その母を引きずりながら玄関へ。父も母も私も時が止まる。
そして、その日は私が休むことに。
母は安心したのか、布団に潜り込んだ。
追伸
父と母と私は、三つ巴の共依存のようだった。
父は「仕事に行かないとお金がもらえない、お金がないと困るだろう」と。
母に優しく話しかける。
父と私は戦友になっていた気がする。
にんじん
小学生の頃『にんじん』が嫌いだった。野菜の「にんじん」ではなく。
ジュール・ルナールの小説の『にんじん」。
にんじんと私が似ているように感じ、読むのを止めたり、そのくせ気になって読んでいた。
私には優しい母と、自分では感情を押えられない母がいる。
毎日、母の顔色を窺っていた気がする。
小説の中のにんじんのお父さんが、にんじんに「お父さんがお母さんを好きだと思うのか」と言った。
私の父は「あんなになった母さんがかわいそうだ」と自分に言い聞かせるように言っていた。
追伸
昔のにんじん(野菜)は、とてもクセがスゴイ。
香りが強くて子供には人気がなかった。
今は甘みもあり食べやすくなった。
たまに、クセがスゴイ奴を食べたいときがあります。
不幸の起点
挙式を両家の中間距離の東京で。東京のホテルは予算内に収まらない。
北国から出てくる元夫の親戚、雪が降る前にとのリクエスト、
そうなると日程が取れない。
諦めかけたとき、ホテルの方が実は空いている日がありますが、いかがですか。
「挙式代、貸衣装代、写真代などがお安くなり、披露宴も延長できます」。
嘘のような本当の話。
その日は、仏滅。仏滅より挙式費用の魅力に勝てなかった。
追伸
田舎者の私の両親、親戚、東京は外国と同じ。
父はマイクロバスを頼んだ。
バスのドライバーが集合時間を間違え、式に間に合わないと連絡がきた。
ホテルの方が「大丈夫です、今日のご利用はお客様だけなので待ちますよ」。
仏滅もいいことがあると感謝したが。
その後何十年もたった頃、仏滅が本性むき出しに襲ってきた。