無謀な経済政策
大昔からどこにでも見られる一般的慣習として、平和時には蓄えをして戦いに備え、征服或いは防衛の手段として事前に財を蓄積する。世の中が乱れ、混乱に陥った時には、決して並外れた課税などに頼らず、ましてや借金することはない。政府がその歳入をすべて費消してしまう状況では、必ずその国は衰弱し、不活動化し、不能状態に陥ることを歴史は教えてくれる。
デイビッド・ヒューム、“Of Public Credit”(1752)
アメリカ国家債務につき、無邪気な見方をしてアメリカは1789年に真っ新な状態で始まって、19世紀に少しずつ債務を積み重ね、20世紀になってそれが幾何級数的に増加し、21世紀の始めには今の維持不能状態になったのだと考える人もいるだろう。
この見方は間違っている。アメリカ国家債務の歴史は、直線的に増えたのではなく、この無邪気な見方より、微妙な動きをしてきた。
アメリカ合衆国には国家として成立する以前から国としての債務があった。その後の債務の歴史はその時代の難局によって赤字と黒字が交互に起こるパターンを示している。一般的にはアメリカは戦費をまかなうために借り入れし、平和時に債務を返済してきた。
その結果、アメリカの債務の対GDP比率は上がり下がりを繰り返し、時にはまれに極端に動くこともあった。結果として、過去10年間でアメリカの債務の対GDP比率がその増加傾向を押さえる信頼できる方法を見つけることなく、極端なレベルに達してしまったことが悩ましいのだ。
この債務危機は、ブッシュ43代(戦争に費消)、オバマ(社会保障に費消)、トランプ(減税)と過去3名の大統領の重点政策の関係で巨額な支出がなされた結果なのだ。
ブッシュ43代は5.85兆ドルの債務を増加、オバマは8.59兆ドル、トランプに至っては財務省の予算に基づけば多分8.28兆ドルの債務を1期目で増加させるだろう。
この20年間での合計22.72兆ドルの債務増加は、クリントン政権の終わりの5.8兆ドルの債務から300パーセントの増加となる。単純に言うと230年間慎重な債務管理をしてきたアメリカの国家債務は今では脱線してしまっている。
アメリカは1789年に憲法の下で国家として始まった時、1775年から1783年の独立戦争時代に発生した戦時債務の取扱につき個別の州と大陸会議にて話し合うことになった。
1790年アレキサンダー・ハミルトンにより改訂された計画に従ってアメリカ合衆国はこの債務を引き受けることに合意した。
ハミルトンは新しい債券を発行し、独立戦争債務の支払いに充てた。そして関税で償還する新しい債券を発行し、未発達なアメリカ産業をイギリスとの競争から保護しようとした。