第4話 強制的トリクルダウン

4月26日

この日は一日中市内観光。

まずは、クトゥブミナール。高い塔があって大きな遺跡だ。暑い、さすが朝から40度の世界。日差しが本当に射すようだ。ドライバーは駐車場で私を降ろすと、ここで待っている、と言う。

時間は、と聞くと、好きな時に戻ってくればいいとのこと。これはどのタクシーも共通していた。高い塔があって大きな遺跡だ。西洋人の団体がいて、警備員のようなジャケットを着た人が少人数ずつ案内をしている。私は一人で見て回った。

しばらく見ていると、私にも警備員が寄ってきて写真を撮ってくれるという。1、2枚撮ってもらい、もういいと言うと、ベストポイントがあるからこっちに来いと言って、塔を指先で持っているように映るポイントへ連れて行ってくれた。

ありがとうと言って離れようとすると、物陰へ連れて行かれ、親指と中指をすり合わせるような仕草をした。チップをくれというのだ。ネットに書いてあるとおりのだまされポイントだ。もちろん、I have no money.と答えた。

そのあとロータステンプルへ行った。白い蓮のような形をしていて、ちょうどシドニーにあるオペラハウスに似ている。1分間、中に入った人全員で黙とうすると、さまざまなことが胸をよぎり、敬虔な気持ちにさせられる。

レッドフォートは中に入っても外観と変わらないと言われ、周囲を巡って終わりにした。さて、次は一番の楽しみだったチャンドニーチョーク。ドライバーはそこには車は入れないので、リキシャ(自転車の後ろに座席がついている乗り物)で行ってくれ、と言う。

「通りを歩きたいのだから、近くまで行って降ろしてくれればいい」と言うと、

「歩くのは危険だから、リキシャにしろ」と譲らない。わたしも、

「そこにも行く契約なのだから、行けるところまで行ってほしい」と譲らない。

すると、「リキシャの料金も入っているから大丈夫」だと言う。しばらく言い合っていたが、まあ料金込みならと思い、折れることにした。

リキシャは石畳の上をよたよたと進む。チャンドニーチョークというのは下町中の下町、雑貨やスパイス、衣類などの小さな店が並んだ繁華街だ。入り口を入ったところで降りると言うと、何も聞こえないようにスピードを上げる。

車やたくさんのリキシャの中を縫うように、いや待てよ、車は入れないのではなかったっけ、などと疑問が浮かぶが、あたりの様子の楽しさと風を切って進む爽快さでそんなことはすぐに忘れてしまう。

歩いたら危ないと言われたが、何のことはない外国からの観光客でごった返している。まあ、この通りの外れまでリキシャで行って帰りを歩けばいいかと思い、あたりの賑わいを楽しむことにする。

外れまで来ると降ろしてくれたので帰りの約束をしようとすると、ついてこいと言ってすたすたと歩きだす。せき込むようなスパイス屋の中をずんずん進んで行く。塔のような階段を上っていくとそこは街を一望できる展望台のようなところだった。素晴らしかった。