「まあ、そういうわけだ。そこでだ。弘樹、よく聞けよ。ここでおまえに重要な二つの申し送りをする」

父の顔が少しこわばるのが見て取れた。まさしくこれが橋口家一世一代の申し送り作業なのだ。俺は、黙ったまま固唾を呑んで頷いた。

「まずひとつ。おまえは陽菜さんにあらかじめこの話を伝えて、今後『ふみ』さんの存在が感じられても驚かないように諭しておくこと。そして、『ふみ』さんの話は子どもの前、日没以降の夜の時間帯においてはいっさい口に出さないこと、これを厳格に履行することを約束させるんだ。いいか?」

俺が頷くのを見て、父は一息ついた。その表情は、自分が発した言葉に誤りがないか何度も確認しながら、努めて自分を落ち着かせようとしているかのようだった。そして俺の目を見つめて続けた。

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次回更新は11月12日(火)、22時の予定です。

 

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