「ああ、ダヴィッドだな。前の服も良かったが、今日のそれはまたえらく似合っておるな。あやつ、そなたに着せるとあって頑張ったな。いやあ、惚れ惚れするわ。
ところで、カザルス殿がこの前の刃傷沙汰(にんじょうざた)のことで責任を感じておられてな、上納の件についてはなかなか好条件で承諾頂けたぞ。
今日はそれをこうしてご名代が告げに来られた」
そこにはバルタザール・デバロックが涼しげな表情で立っていた。
「刃傷沙汰とはまた大袈裟な。私は何も」
「おう、そうよな、だがご厚意はアンブロワにとっては有り難い。素直にお受けしようと思うので、そなたちょっとこちらと一緒にプレノワールまで礼に行ってくれぬか」
シャルルはバルタザール・デバロックの方を見やり、
「前に別の者を行かせたらどうもご不満だったようでな、そなたをご指名のようだわ」と二人は顔を見合わせて苦笑いを浮かべた。
「今からすぐにでございますか? こんな格好で……」
「それのどこが不満だ? カザルス殿は洒落者だからお気に召すのは間違いなしじゃ。早く行け」
【前回の記事を読む】「この服を貸す?」噂の美青年ガブリエルの服に異常なほどに執着する仕立て屋の男性…その真意とは?
次回更新は11月6日(水)、18時の予定です。