「ううっ、身共は……」と殿、

「んぅ!」と眉をひそめる友、

「拙者は……」と探るように言う殿、

「んぅーん」と喉の奥を鳴らす友、

「私は……」と確かめるように言う殿、

「うん!」と納得したように頷く友、

了承を得られて安心した殿は、

「私は豆腐を常日頃食しており、父上から男子は食の事にあれこれ申してはならないと、言われておりましたゆえ」

そう話す殿の言葉を聞き逃すことなく、

「さすが! 京都に来たがった訳ね。話し方が武士っぽい」と裕子。

殿は何か言いたそうな顔をしたものの、黙って箸を動かしていた。

正解! 話さないでいて欲しい。周りの反応が面倒くさいから。

私はここ何日間かの気苦労で絶対に老けたと思う。気を取り直して私は皆に言う。

「そんな事より、オルゴール館が待っているよ、早く食べようー」

涼しかったお店を出ると、今を盛りの蝉が暑さに拍車を掛ける。

それでも期待に胸膨らませ、聞いたとおり道を右に曲がる。こんな夏休みも終わり頃だと言うのに少し人通りが増えてきたのは花火のせいか。そんな人出を見るにつけ、夜になるともっと増えるんだろうなと思った。

目的のオルゴール館は、建物は小さい割に、中にあるゴズラと言うらしい機械仕掛けのオルゴールは天井に届く程の大きさで、何段もの壇上にある人形達は音色と共に各々が動くという大掛かりな物でした。

その他にも少し大きなキャビネットくらいの縦型のオルゴールが数台あり、これらは皆オルゴールが発明された初期の物で、直径六十cm強位の円形の金属板に溝がついていて、この盤が回り立っている金属を弾きメロディーを奏でるらしい。

来たかった所でもあり、はしゃいでいると職員に注意される。その時点で殿の事を思い出し見てみると、これまで色々な驚きに触れているせいか特段驚いている様子はないが、ただ音色の美しさに聴き入っているようだった。

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