第三章 京都で剣士になる

「洋子、携帯番号知っているよね。掛けてみたら」とふーちゃん、

「遅刻はソフトクリームおごりだな」と友が、

「もう少し待って、来ないようなら洋子掛けてみて」と裕子。

タマは本当にスマホの使い方キッチリ教えたのかぁ? 試しに操作できるか確認をしておけば良かった。はぁー……今日何度目かの溜め息が漏れる。そう思っていると、殿の姿が曲がり角から現れる。

「あぁーっ、水野君ここよ、ここ。こっちよ」

私は勢い大声を出す。

殿お~やっときたよぉ~。タマは何やっていたんだ! いつもの、あの何でも知っていますよーっていう態度は見せ掛けかー。

急いでやって来た殿は、

「遅れて、かたがた相済まぬ」と言うのだが、それを聞いて友が笑い出す。

「ふふふっあはははっ……水野君、本当時代がかっている。いいよねぇ皆、面白いから」と友が言えば、皆笑い顔で頷いていた。

「今夜は花火があるらしいから、このまま宿のある嵐山まで行って荷物預けてからお昼にしようと思う。渡月橋(とげつきょう)の近くにはオルゴール館があるらしいから、そこも見たいし、急ごう」と裕子は言う。

私達は電車を乗り継ぎ宿に着くと、浴衣のまま出掛けることにした。浴衣は明日、嵐山にある支店に返せばいいことになっている。

宿を出た私達は、プラプラと渡月橋に向かう。道すがら私はタマに脳内会話で、遅くなった訳を聞いてみると、

(仕方が無いだろう。紫宸殿を始めほとんど全てと言っていいほど説明申し上げると、一々叩頭されるんだから、遅くもなるぞ)

(んぅ! コウトウって何)

(そんな事も知らないのか、額ずいて拝謁申し上げる事だ。……要するに土下座だ)

(ええぇー、一緒に回らなくて良かったぁ~)