特攻大作戦
諜報共同体はCFIUSのメンバーではない。
その代わり、外国資本がアメリカ企業を買収しようとしている時、その買い手の正体と買収意図を調べアメリカの安全上の脅威になるか、諜報共同体はCFIUSの依頼で調査することになる。
諜報共同体はその外国の買い手が犯罪組織あるいはアメリカと敵対する軍やスパイ組織と繋がっているかどうか情報を収集することになる。CFIUSの決定には強い緊張が伴う。
他方でアメリカは開放経済を維持しており、国外からの投資を歓迎する。アメリカの最も有名なブランドのいくつかは外国企業、ソニーやサムソンによって製造されている。
レノボは以前はシンクパッドを作るラップトップコンピュータのメーカーで中国企業であるが、ラップトップ事業をIBMから買収したのだ。ドイツ企業BMWの自動車はサウスカロライナの工場で生産されている。
アメリカへの外国投資はアメリカ経済に仕事、技術それに成長をもたらす。それでもアメリカには企業の最重要な部門や会社があり、外国資本は国家安全保障の観点から厳しい取調を受けることなく、手をつけることはできない。
もしクレムリンと関係のあるロシア企業がNASDAQを買収したとしたら、アップル、アマゾン、フェイスブックその他アメリカの代表企業の偽の売り注文を株式市場にばらまくような注文入力システムをプログラムできることになる。
これはクラッシュの引き金となり、2008年のパニックより重大な株式市場のメルトダウンを引き起こし、アメリカ人の貯蓄を破壊し尽くすだろう。
ロシアは正確に狙いを定めた核爆弾よりも株式市場の操作により、より多くの富を奪うことになる。ロシアによるNASDAQの買収は確実にCFIUSによって拒まれることになるだろう。
それでも多くのCFIUSの事例には理解しがたいものや不明瞭なものがある。生のインテリジェンスを収集し、その点を繋いでいく作業が求められる。
そのためには、CIAやDIA(アメリカ国防情報局)を含む諜報共同体のメンバーが現場責任者、秘密捜査官その他専門的手段を駆使して、敵の正体を隠す何重もの撹乱目的の法的な防御を打ち破る必要がある。
具体的には諜報共同体が活動していないはずの地域、モスクワ、北京それにテヘランなどで危険を伴う活動がそれである。
インテリジェンスの収集が完了すれば、生の報告書がラングリーのCIA本部にいる分析官に渡される。分析官はたとえば人間のデータ収集者なら気づかないような技術的手段で入手したデータなどの他の情報源からの収集データとそのデータを比較しながら、点を繋いでいく。