カナママが「これ評判のバナナロール、ハルのお礼よ」と菓子折り持ってる。

そしたらパパが、「俺も半分カネ出すから、両家からってことにな」なんて言い出す。いちいち言わなくても同じ苗字なのに。

カナが病院はみんなが呼び捨てで呼び合ってるとか、ドッグランとか、ワンニャン教室やらシェルターやら、お風呂のことなど、しゃべりまくってる。

大きなドッグランを回り込んで、地下駐車場に入る。エレベータで一階のエントランスに出ると、綺麗な宅配ボックスと大きめの郵便ボックスがキッチリ並んでいる。

壁にはペットタクシーのご案内と描かれたポップ。「救急の場合、ご連絡ください。ご自宅へのお迎え、お見送り致します。また、レジャーのお供も致します」と細かい料金表が書かれてる。パパったら 「タクシー呼ぶより安いな、人間はダメなのかな」なんて言ってる。

ドッグランのポップには「十時から十七時まで時間制限なし、出入り自由。入場料は三百円、十五日分のチケットが四千円。ウンチはウンチボックスへ、オシッコしたら水で薄めてね」なんて書いてある。

トリミング室や、車いす工房、シェルター、それに洗濯屋さんの紹介まで、可愛いポップが、綺麗に貼られている。しかも全部にカナが振ってある。

「子供も多く来るんだな」ってパパ。

「丁寧だな、お前らも全部読めるだろ」ってカナパパ失礼。

インターホンで予約番号と名前を言ったら、自動ドアが開き、ドッグランが目に飛び込んでくる。大きな樫の木が離れて三本立っていて花を咲かせている。その下は日陰にもなっている。フェンスの内側を照らすように三本の照明塔が見える。 

「こりゃどんくらいの坪数があるんだ? でも、お前たちの大学ができたんで、この辺の地価は最近上がってんだ。すげえなあ。大家は誰だ?」ってパパに聞かれても、あたしは知らない。