四月十二日<岐阜城>
信長
「光秀、大儀。しかし、公方は決して黙ってこのまま引き下がる男ではない。必ずやまた動き出す。次は容赦しない。徹底的に叩き潰してくれる!」
光秀
「ははっ、ところで公方様の御教書に呼応し、昨年謀叛した松永弾正は、その後多聞城に籠っておりますが、如何致しましょうか」
信長
「あ奴は『機を見て敏』な男だ。油断なく見ておれ、いずれ降参してくるであろう。ところで今、儂は琵琶湖のある船着き場で、誰もが見たことのない、日ノ本一大きい戦船を造っておる。これができれば一度に数千人の兵を好きな所に送り出すことができるのだ。皆ビックリして見物に来るであろう」
光秀
「日ノ本一巨大の戦船でありまするか、それは楽しみでございます。就航の暁には是非某の城に寄港して頂きたくお願い申し上げまする」
⇒信長様は何故松永殿に対してのみ、あのように寛大なのか、よく分からない……皆不思議がっておる……。
信長
「うむ、驚くな、楽しみにしておけ……」
光秀
「ところで、既にお聞き及びのことと存じ上げますが、去る四月十日に武田信玄が亡くなったとのことですが」
信長
「うむ、儂のところにも報せが入っておる。これで天下布武が一層進むというものだ
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