四月七日<二城御所>

清信

「公方様、只今吉田兼和殿が、朝廷よりの勅使の二条晴良様を案内して来られました。また、織田家より明智光秀様も同道され、お目通りを願っておいでです」

兼和

「公方様、早速お目通りくださりありがとうござります。本日は朝廷より二条晴良様を勅使としてご案内して参りました。また、織田弾正忠信長様の特使として、明智光秀様もご同道致しております」

義昭

「勅使のお方。わざわざのお越し、ご苦労様でござる」

晴良

「征夷大将軍足利義昭、これよりお上の御言葉を拝読致す。謹んで承れ……。以上である、綸旨を謹んで拝受し、早々に弾正織田信長と和睦せよ!とのお言葉であらっしゃります」

義昭

「ははっ、畏まって候。お上よりの綸旨確かに拝受致しました。信長と和睦することに異存はござりませぬ」

⇒ありがたい、渡りに船じゃ、この綸旨で信長もこれ以上二条御所を攻めてはこないだろう……予の面子も保たれた……。

晴良

「そこに控えおる明智光秀は織田信長が遣わした特使である。よって、両者とも神明に誓って和睦を承諾したと、お上に奏上して間違いおじゃらぬな」

光秀

「ははっ。主君信長より、お上の綸旨をお受けするよう言い遣っておりますれば、異存は御座りませぬ。必ずお守り致しまする」

⇒ありがたい。これで時間が稼げる。早速このことを信長様にお知らせし、同時にこの『綸旨』の写しを武田信玄をはじめ諸国の大名らに報せることで、何としても信玄の動きを止め、動静を掴かまなければなるまい……。

義昭

「勅使様、ご苦労様でござった。お上によしなにお伝え戴きたい」

⇒おのれ信長、この京にまで火をかけるとは……恐れ多くも朝廷まで脅すとは許すまじ。信長打倒もあと一息じゃ、折角掴んだこの好機をむざむざ潰す訳にはいかない……

ともかくこの二条御所にいては危ない。即刻離れてもう少し防御に良い城に移り、すぐさま旗揚げしたい。さればあの信玄も必ず進撃を開始し、本願寺も立つだろう。信長、今に見ておれ! 今度こそ息の根を止めてくれるわ……。