「死神? 確かに肌も白くて髪もあんなボサボサですし、クマもすごくて頬も痩(こ)けてて……」
「見た目の話じゃない。いいか、あの人がなんでツーマンセルが基本の警察捜査において特例的に単独捜査をしているかわかるか? 課長の木嶋さんでさえ、さっきあんまり追及しなかっただろう。組織上、体裁が悪いから大勢の前で怒ってみせたが意味なんてない。この場にいる奴らがざわついたのも、誰もが深瀬肇っていう刑事に関わりたくないからだ」
「何ですかそれ。なんであの人は、単独捜査してるんですか?」
「ああ当然、ずっとそうだったわけじゃない。深瀬さんにも相棒がいたことがあるんだ」
「つまり?」
嫌な予感がして、笹井はさらに声を潜めた。そして、想像以上の答えが返ってくる。
「相棒は死んだんだよ。しかも一人じゃない。深瀬さんの相棒になった四人もの刑事が立て続けに殉職している」
野沢の言葉に、笹井は唾をごくりと飲み込んだ。
「詳しくはわからないが、全員が別々の事件、場所、死因で死んだらしい。交通事故や転落死、入院中に容態が急変して亡くなった刑事もいたとか。それぞれに因果関係もあるかないかすら、定かじゃない」
「ええ? でも、そんなのたまたま偶然が重なっているだけでしょう。もし意図されたものだとしたら、誰かが深瀬さんを狙っているって意味ですか? それとも」
笹井は言葉を詰まらせ、眉間に皺を寄せた。野沢は唇を尖らせると先を急いだ。
「深瀬さんが狙われてるなら、とっくに本人が死んでるさ」
「じゃあ、深瀬さんが、単独捜査するために相棒を……」
「おっと、それは言いすぎだ」