第1章 くしろ子ども未来塾

勉強もしっかりやるのはなぜ?

2011年、東日本大震災があり、その年の5月、被災地にボランティアで出向くことになりました。被災地での夜のミーティングの時のことです。

釧路からのメンバー同士、自己紹介を始めると、何とその中に現役の小学校の先生がいるではありませんか!

さらに、その先生は既にTOSS(Teachers‘ Organization of Skill Sharing 、全国の優れた「教え方」をみんなのものにする)という団体で、教え方の研修をしたり社会貢献事業として教育にまつわるボランティアをしていたのです。

「私には夢があります。子どもたちが好きなことに取り組める場所を作りたいのです。お勉強は必修にしたいので、是非一緒にやっていただけませんか?」とのお願いに二つ返事で承諾してくださいました。

その方が、現在、副理事長の山本真吾先生です。劇的な出会いでした。これでやっとすべてが整ったという思いでした。今でも7~8名の現役の先生が指導に来てくださり、工夫を凝らした学習法で子どもたちを導いてくださっています。

ボランティアの日は被災地での惨状を目の当たりにし、自分自身のちっぽけな力に暗く沈んだ気持ちで帰路に就きました。自然の前では人間は無力であることを思い知らされながら、それでも生きていかなくてはならない。

被災地が繋げてくれた山本先生との出会いは、「この縁を無駄にせずしっかり形にせよ。未来ある子どもたちのために力を尽くしなさい」と言われているようでした。

帰りの列車の中、ふっと頭に浮かんだ「くしろ子ども未来塾」という響き。名前が決まった瞬間でした。

スタッフが皆笑顔なのはなぜ?

運営には私の友人や、会社の元社員さんたちも関わってくれています。日曜の朝早くから会場入りして講座の準備、会場設営、受付の準備、コロナの感染予防対策……多くの仕事をわずかな時間の中で消化しなければなりません。

ですが、なぜかスタッフの皆さんは笑顔で働いてくれています。なぜなら1か月に1度の未来塾を楽しみにやってくる子どもたちの笑顔に会えるからです。

楽しみにやってくる子どもたちが怪我をしませんように、楽しんでくれますようにという親心にも似た思いが自然に芽生えているのです。

ボランティアという崇高な行動が人間を優しくするのでしょうか。子どもたちのためにというたった一つの思いが作り出す、温かい空気。未来塾は宝物がいっぱいです。