孫に千字文字素読をさせる祖父
父の長兄(クナボジ)は農家なのに、一切百姓をしないで学問をしているようです。その代わり自分の息子が百姓をしています。彼の手はまっ白で、まるで女性の手みたいです。彼は家の中で、本を読んだり漢字を書いたりしています。
家の柱には漢文が貼ってあります。学者のようです。彼は当時七十代だったと思います。日本語は話せません。
私に儒教の五行思想を教えてくれました。「一族の男の子が生まれ名前をつける時は五行思想に則ってつけるように法則が決まっている」ということですが、私はまだ彼の韓国語を完全に理解ができなかったので、彼の言っていることが不消化です。
なぜ私に五行思想を言ったのでしょう。もしかしたら彼は韓国文化を教えたかったのかもしれません。それはちょっと難しいと思いました。もっと韓国語を理解できなくては彼の言いたいことは理解できません。
ただ、男社会の韓国では家系を重んずるため男が大切です。女は嫁に行くので私がそれを聞いても仕方がないのです。
次の日の早朝です。外で何か念仏のような声が聞こえるので外に出て声の聞こえる部屋のほうに行き、隙間から中の様子を覗いてみました。するとクナボジの前に三歳くらいになった孫が正座していました。クナボジは孫に千字文字の素読をさせていました。私はその光景にびっくりしました。