④ 社会医学の学習
基礎医学の授業が終わると、公衆衛生学や衛生学などの社会医学の学習が始まります。社会医学は基礎医学や臨床医学とは分けて取り扱うべき、独立した重要な医学領域です。
その後に臨床医学を学ぶ上でも、大変参考になります。特に卒業後に多くの症例を対象とした臨床研究を企画する際や、実際に得られた臨床データの解析を進めていく上で、社会医学の考え方、そして統計解析などは、本当に大切な分野です。
臨床研究を進めていくには、研究の素案(プロトコール)を立てて、研究方針の概要を練った後、臨床研究の倫理審査を受ける必要があります。またさまざまな法的規制についても、学ぶ必要があります。
これらを担当する専門領域ということができます。たとえば、個人情報保護、インフォームドコンセント、ヘルシンキ宣言 など、よく利用されている用語やその内容なども、十分勉強してほしいものです。
また疾患そのものの、全国的な傾向や世界的な動向なども把握し、全体的な流れから最適な指針を出してくれる学問領域でもあります。その意味では社会医学は、基礎医学と臨床医学にまたがる重要な分野と言えるでしょう。
正直言って学生の時の学習では、あまり記憶には残っていませんでした。その後私が北海道大に移った折、大型研究費を獲得して、企業と一体となって最先端の医療の開発と実用化に取り組みました。その際に社会医学の専門家にお世話になりました。
当時厚労省の審議官をしておられた方と親しくなりました。その後私たちの獲得した研究費で、新しくレギュラトリーサイエンス (注釈1)部門を立ち上げ、その方に教授として北海道大に来ていただきました。
(注釈1)医薬品・医療機器等の品質・有効性・安全性確保のための科学的方策の研究や試験法の開発、規制のためのデータの作成と評価する部門。
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