「僕らは子馬の群れのように二階へ上がる」バーナードは言った「足を踏み鳴らし、ぺちゃくちゃしゃべり、一人ずつお風呂に入る順番を待つんだ。たたき合い、取っ組み合い、固く白いベッドの上で飛び跳ねる。僕の番だ。さあ行こう。
「ミセス・コンスタブルがバスタオルを巻き、レモン色のスポンジを手に取ってお湯につけると、それはチョコレート色になりお湯がぽたぽた落ちる。そして、自分の下で震えている僕の頭上高くにスポンジを挙げ、それを絞る。
背骨の溝に沿ってお湯がどっと流れ落ちる。生き生きとした感覚の矢が背骨の両側を走る。温かな肉に包まれる。体のひび割れは潤い、冷たい体は温まり、洗い流されてまばゆく輝いている。お湯はウナギのように体を流れ下り、覆おおう。
今度は熱いタオルが僕を包むけど、肌ざわりがごわごわだから、背中をこするたびに血が嬉しそうに巡る。芳醇で重厚な感覚が心の頂に湧き上がり、一日が雨のように降ってくる――森が、エルヴドンが、そしてスーザンとハトが。
心の壁を勢いよく流れ落ち、一つにまとまりながら、一日が落ちてくる、豊かに、きらきらと輝きながら。僕はゆったりとパジャマを身にまとい、この薄いシーツの下で横になり、薄い光の層を漂う、波をかぶると両眼に流れる、水の膜のような光の層を。
それを透かして、遙か遠く、かなたに、かすかに遠く、合唱の始まり、車輪の軋きしり、犬吠(いぬぼえ)、人の叫び声、教会の鐘、そして合唱の始まるのが聞こえる」
「ワンピースとシミーズをたたみながら」ローダは言った
「スーザンになりたいとか、ジニーになりたいとかいう適(かな)いっこない望みは脱ぎ捨てるわ。代わりにつま先を伸ばして、ベッドの端に付いている手すりに触れるの。そして納得するわ、それに触れながら、ああ硬いって。
もう沈まないし、薄いシーツをすり抜け体ごと落ちていくこともないわ。この貧相なマットレスの上で体を伸ばし、ぶら下がって宙に浮くの。
私は今大地の真上にいる。まっすぐに立っていないから、何かにぶつかって怪我することもないわ。すべてが柔らかく、曲がっているの。壁や戸棚が白み、黄色く塗った戸棚のます目が曲がり、その一番上で青白い鏡がかすかに光っているわ。
今、心が自由に外へとあふれ出すの。
【前回の記事を読む】「うすねずみ色の雲が浮かび、恐怖に身のすくむ木、怖くてどうしようもない木が、銀色の樹皮を脛すね当てのように纏まとっていた。元気を出そうとしても無駄だった。」