この世代の男性は、現役時代に会社に所属し、その全てを捧げるような勢いで仕事をしてきた方が多いのではないでしょうか。そうすると、どうしても現役時代の会社名や地位、肩書などにとらわれる方がいらっしゃるのも事実です。もちろん現役時代に努力し、活躍されたことを誇りに持つことは問題ではありません。
しかし、老人ホームでの集団生活において、一緒に生活をして人間関係を築いていく「これからの仲間」に対して、過去の実績ばかりを強調してしまうと、どうしても人間関係を上手く築くのが難しくなります。
今後、老人ホームに入居を検討し、入居後に新たな人間関係を築くのには、この「自らの誇り」は、大切な思い出として一旦胸に仕舞ったほうが良いと感じます。私の運営する施設では新規入居が決定すると、その方に食堂のどの席に座っていただくかを必ず打合せします。なぜなら新しい入居者にとって、「他人」である他の入居者とお話をする機会は、食事を摂る時が多いからです。
その方のアセスメントの状況を勘案し、性格や病気の状況、介護の状況を含めた身体的状況を考えながら、食堂の席や人の組み合わせを検討します。当然、皆さん性格的にも合う、合わないということもありますので、いつも上手くいくとは限りません。しかし、このように施設側で人間関係に水を向けるような心配りをすることで、新規の入居者が集団生活に馴染むことができるきっかけ作りをしています。
【前回の記事を読む】老人ホームを見学する際、"ある質問"をしてみると、その施設の本質が垣間見れるかも...?