五 午後……十二時四十分 ドリームランド内社員食堂
「あ、はい」
男の内ポケットから取り出された警察手帳に、滝口は慌てて立ち上がる。
「失礼ですがあなたは?」
貝崎は宮内の方に顔を向けた。
「あ、僕、システム運用部の宮内って者です。ドリームアイの運行業務の担当ですね」
「ああそうでしたか。こちらもまだ主要スタッフを把握できずにいるんです。あなたにもお話を伺うことになります。それまではここで待機していてください」
「待機ですか~。じゃあなんか食べてますね。でも、早めにドリームアイの管制室に戻して欲しいんですけど。本社からの連絡が凄いんですよ。でも、今何も調べる権限がないじゃないですか、困ってるんですよね」
そう言い残すと、宮内は席を立って場所を貝崎に譲った。滝口の向かい側に座った警察官は、口調とは裏腹の偉そうな態度で腕を組んだ。
「さて、改めまして滝口美香さん。こんな事態になって混乱しているでしょうが、我々も気持ちは同じです。長く刑事をやってるが、観覧車ジャックなんて初めてですから」
「はい、そうですよね」
滝口は、息を吐くのとほぼ同時に硬くなっていた肩の力を少し緩めた。
「おや? じゃあ認めるんですか。今回の事件が、事故ではないということを」
「えっ……いえ」