第4章 一夫と泰子さんの生い立ち
1 出会いから新婚旅行まで
新婚旅行はハプニング続出
翌日はウィーンのホテルに宿泊する予定だったのですが、ちょうど同じ日に大きな学会が開かれていたようで、ホテルリストに載っているホテルに問い合せましたが、空きが一つもありませんでした。
行けば何とかなると思い、とりあえずウィーンに向かうことにしました。まず最初に、音楽会のチケット購入に窓口に行きました。四苦八苦しましたが、身振り手振りでやっとメリー・ウィドウのチケットを購入することができました。
チケットの次は宿泊先です。今度は、駅のインフォメーションに行きました。再度身振り手振りでホテルもゲットすることができました。しかもドナウ川沿いの素敵なホテルでした。
当時を二人で振り返って、「ハハハハ、結構面白いよね。絶対駅に行けば宿はあると思っていたよ。綱渡りだけど、こうやってウィーンでメリー・ウィドウを聴いて、ザルツブルクでポリーニもバーンスタインも聴くことができました。だめだったら別のプランに切り替えれば何とかなるものですよ」
「頭のいい人じゃないとできないな(笑)。それにいろいろ知っている人」と笑い合いました。
音楽祭を無事に終えて、スイスのチューリッヒからモンブランに行けたのはうれしかったです。八千メートル級の山に登るのに、私は寒さ対策にセーターを購入しました。しかし泰子さんは、なぜか寒さと関係ない民族衣装(アルプスの少女が着ていた服)を買って喜んでいました。
あくる日は、スイスからフランスのニースに行こうと思って、駅のホームで列車を待っていましたが、一向に来ません。何と、国をまたぐので駅の中に税関があり、それを通って別のホームに行かなければならなかったようです。
結局、ほかの予定もあったので、残念ながらニースには行けませんでした。最終地のパリでは、市内観光とノートルダム寺院などの有名どころに行きました。エッフェル塔の前でツーショットで写真撮影。
ホッとリラックスした笑顔でした。最初から最後までフリープランで、スリリングでドキドキする不安だらけの旅でした。さらに私たちは二人とも、全く現地の言葉が喋れずに、度胸だけで挑んでいました。
泰子さんは私を、そんな無鉄砲な人間だとは知らなかったから驚いたようですが、最終的には私といれば安心だ、と思ってくれたそうです。無事に泰子さんと帰ってこられてほっとしました。
泰子さんが旅行中のメモをしっかり残してくれていたので、前述のライフレビューで二人の思い出を取材されたとき、新婚旅行のことを昨日のことのように思い出すことができました。ありがとう泰子さん。珍道中は無事に終わりました。