第1章 山本果音
十四.お祭り騒ぎ
果音は麻衣と本田に了解を得た。
バーバラが戻ったら取材スタートということで、OKしてくれた。
祐樹は真っすぐ果音を見ながら口を開いた。果音は何だかとてもドキドキしたが、穏やかな気分でもあった。
「僕が、ここの卒業生なのは、知っているよね」
「はい。全校集会の時に、聞きました」
祐樹がうなずく。そしてゆっくり話を始める。
「僕は、高校生の時……、無気力で、正直学校が嫌いだった。周りの期待や進路のこと、両親の離婚……。色々なことがストレスとなり、もう何もしたくなかった」
「え! 今の先生から想像できない」
祐樹は軽く微笑み、窓の外に目を向けながら話を続けた。
「僕には夢がなく、何より居場所がなかった。そんな時、バーバラに出会った。バーバラは『夢がない? すごい! これからチャンスだらけだね』って、言ってくれた」
「チャンスだらけ!?」
「うん。正直その時は分からなかった。でも、この変なおばさん、失礼、バーバラのエネルギーに何故か安心した。何もしなくても大丈夫、焦らなくても大丈夫ってね」
「バーバラの魔法ですね」
「そうだね。僕は毎日のように、保健室へ行った。朝も昼も放課後も。いつもバーバラのバイタリティーに驚かされたよ。僕は、バーバラのおかげで居場所を見つけられた」